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グローバルのヒント

Indo Watcher

2015年2月3日

第4回 インド人とスイッチ

 先日、バンガロール(カルナタカ州)のザ・チャンセリーホテルに泊まった。日系企業が提携しているだけあって、至れり尽くせりのホテルであった。日本食レストランが併設されているばかりか、部屋には日本式の深いバスタブ、地下には大浴場やマッサージルームもあり、さながら日本に居るかのようなインドのホテルである。一日の終わりにお風呂に入って癒されたいと思うのは日本人の習慣であり、それが叶うのは誠に有難い話である。これですっかり仕事の疲れも癒され、明日への活力になるというものだ。

 もともとはインドのホテルの一部を改装して営業されているとのことであるが、いろいろと苦労も多かったようだ。まず、日本であれば同じタイプの部屋となれば、当然ドアのサイズや壁の形状は大抵は同じだが、それが微妙に違うのだそうだ。規格化された日本の家具を入れようとすると、どの部屋にもうまくフィットしない。現場で改めて調整をするそうだ。部屋の内装工事が終わり、家具を据えつけてしまえば改修工事が終わるというのは、日本の常識であっても、インドの常識ではなかった。

 当社の取引先のインドオフィスでは、会議室の照明のスイッチを交換した際、交換前とは違う照明が点灯するといったことが起こったそうだ。例えば大きい会議室に3つスイッチがある場合、以前は上のスイッチから入口、真ん中、奥と言った具合に点灯していたものが、順番が入れ替わって点灯することになったようだ。これも現場で配線を気にせず勝手にスイッチを繋げたからであろう。

 決まり事を作り、それに合わせて人々が動くというのは、どうやら日本人の性分によるもののようだ。以前このコラムで書いたように、インドではジュガード(「斬新な工夫による応急処置」という意味)により、現場対応が大きくものを言うようだ。相反するこのやり方は、やはり両国のビジネスの関係をより難しくしてしまう一因かも知れない。

 そこで、全体の統制ルールをある程度決め、現場の裁量もその範囲内で発揮できるとしたら、それはいい組み合わせかも知れない。先日偶然にも、ラグビー日本代表のエディ・ジョーンズ監督が同じ様な事を言っていた。日本人はプレーの自主性が欠けているため、現場での創造性に欠け、結果として海外の強豪には勝てない。海外の強豪チームでは、トップからだけでなく現場からも自主的な意見がポンポン飛び出てくる、と。

 インド人と日本人、双方の長所を活かすためには、お互いの役割や短所をしっかりと認識し、チームとして上手く機能する方法を考えるのが得策であろう。インド人が日本流のホテル経営に参画できるのであれば、日本人もインド人と上手く付き合う方法が必ずやあるはずである。