グローバルのヒント
木暮知之のインサイト
PMの体内時計
プロジェクトが遅れ始めるのは、期限を過ぎたときではありません。
「来週、上の人に確認します」
「関係者全員の合意を取ってから進めます」
「スケジュールは、もう少し状況が見えてから決めましょう」
そんな言葉が出たとき、表面上はまだ何も遅れていません。
しかし、PMの体内時計では、すでに時間が動き始めています。
来週、判断が出るとは限らない。合意の過程で新しい論点が出るかもしれない。状況が見えるのを待っていたら、タイムラインを引くこと自体が遅れてしまうかもしれない。
だからPMは、相手の返事をただ待っているわけにはいきません。
もちろん、クライアントにはクライアントの事情があり、意思決定には必要な時間があります。私たちの役割は、それを無視して相手を急かすことではありません。その時間がかかることを見越して、今できることを進め、判断が出た瞬間に動ける状態をつくっておくことです。
誰かとの調整が必要だと分かったら、すぐにその人に連絡を取り、まず話してみる。すると、多くの場合、それで一件落着とはなりません。話したからこそ、新しい論点や別の関係者、事前に解決しておくべき課題が見えてきます。
プロジェクトの課題は、最初からすべて見えているわけではありません。動くたびに、それまで隠れていた次の課題が姿を現します。最初の連絡が一日遅れれば、その次の課題を発見するのも一日遅れる。その課題を解決するための調整も、さらに後ろへずれていきます。
PMにとって、早く動くことは、単に目の前の仕事を早く終わらせることではありません。次の課題を早く見つけることでもあります。
解決すべき課題が一定数あるとするならば、私たちがやるべきことはシンプルです。できるだけ早く動き、できるだけ早く課題を表に出し、一つずつ消し込んでいく。
早く連絡する。
早く話す。
早く次の課題を見つける。
そして、できるまでやる。
「すぐやる、今やる、できるまでやる」という姿勢は、単なる精神論ではありません。想定外や手戻りが避けられないプロジェクトにおいて、オンタイムのデリバリーに近づくための、極めて現実的な行動原則です。
PMの仕事は、決まったことを予定どおり進めることだけではありません。誰かが迷い、何かが止まっているときにも、プロジェクトを前へ進める方法を考えることです。
相手の判断をただ待つのでも、無理に急かすのでもない。必要な意思決定の時間を尊重しながら、私たち自身の推進力は止めない。次に起こることを想像し、必要な準備を先回りして進める。課題解決や合意形成を、誰かの都合だけではなく、プロジェクトのタイムラインに乗せていく。
そうすることで初めて、プロジェクトをオンタイムのデリバリーに近づけることができます。
PMの体内時計は、クライアントの時計よりも、世の中の時計よりも、ずっと早く進んでいる必要があります。
プロジェクトは、予定どおりに動いているだけでは、予定どおりには終わりません。私たちPMが常にアクセルを踏み続け、先回りして動き、次々と現れる課題を消し込んでいく。それで、ようやく予定どおりに着地できる。
それくらいの時間感覚を持つことが、PMには必要なのだと思います。
