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グローバルのヒント

木暮知之のインサイト

2026年1月19日

合意形成を支える「1枚の紙」の力

最近、ある製品開発プロジェクトにおける業者選定のプロセスに関わる機会があった。表面的には「どの会社を選ぶか」というシンプルなテーマだが、議論を進める中で、微妙な違和感が残った。特に印象的だったのは、業者や技術に対する関係者それぞれの立場やスタンスの違いだ。期待している人、疑心暗鬼になっている人、過去の経験から距離を置きたい人。それぞれが違う前提を持ったまま話しているため、議論がどこか噛み合わない。
 

そこで用意したのが、論点を押さえた1枚の紙だった。選定基準、懸念点、次のステップを可視化し、議論の「土台」を具現化する。すると、不思議なことに会話の質が変わっていった。

 

この出来事を通じて、改めて強く感じたのは「合意形成の難しさ」と「紙にすることの力」だった。人は同じ言葉を使っていても、頭の中で描いているイメージは驚くほど違う。ましてや、関係者の立場や責任、リスクの捉え方がバラバラであればなおさらだ。
 

口頭だけで進める議論は、どうしても空中戦になりやすい。誰が何に合意していて、どこが未解決なのかが曖昧なまま、次の話題へ進んでしまう。一度、紙に落とし、論点を並べ、見える形にすることで、初めて「どこがズレているのか」「どこなら合意できるのか」が浮かび上がる。今回の経験は、合意形成の重要性を再認識させてくれた。

 

仕事や組織に置き換えて考えると、この「可視化」の役割は実に多い。意見を聞くこと、明示すること、整理すること。そのための手段として、チャート、比較表、図、イラストといった表現がある。
 

よく「いいパワーポイントは、1枚のスライドで何時間も語れる」と言われるが、それはその1枚が、理解の違いや方向性、進め方の選択肢をあぶり出す力を持っているからだ。可視化は、全員を同じ結論に導くためだけのものではない。むしろ、合意できないポイントを明確にすることにも価値がある。

 

もちろん、完璧な網羅性は難しい。目的に沿って作ったはずの資料が、議論を通じて新たな気づきや次のステップを生むこともある。それは決して悪いことではない。条件付きの合意や、一時的な整理でも十分意味がある。
 

特殊な議論に耐える1枚と、汎用性が高いスライド。現状を説明するための表と、思考のフレームを頭に入れるための図。色分けやカテゴリー分け、項目数の取捨選択。正直に言えば、少し楽をしたい気持ちもあるが、だからこそ「何を伝えたいのか」を突き詰める必要がある。そこが腕の見せ所、でもある。

 

論点は「可か否か」だけではない。可視化された資料から生まれる、さまざまな気づきやひらめきこそが、次のアクションにつながる。たかがスライド、されどスライド。空中戦を避け、絵で見せ、議論を前に進めることは、ピーエムグローバルが大切にしてきた価値そのものだと思う。

 

管理職やチームの立場で考えても、正解をすぐに出す必要はない。教え方、伝え方、任せ方、判断の仕方。そのどれもにおいて、合意形成のための可視化は強力な武器になる。


あなたの周りでは、議論は「見える形」になっているだろうか。1枚の紙が、次の1歩を後押ししてくれるかもしれない。