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グローバルのヒント

木暮知之のインサイト

2026年3月19日

エスカレーションという決断

あるAIを活用した業務効率化システムの開発プロジェクトの現場で、こんな場面を見たことがあります。

 

営業は次々と新しい案件を受注してきます。会社にとっては喜ばしいことです。

一方で現場では、エンジニアやプログラマーの数が足りない状態が続いていました。

 

離職も重なり、残ったメンバーに負担が集中していきます。

納期は守れず、遅延が続く。顧客からも「今度は大丈夫なのか」という不安の声が出始めます。

 

現場のメンバーは、それでも何とかしようとします。

目の前の作業を片付けながら、現状を立て直そうと努力します。

 

しかし状況はなかなか変わりません。

 

問題は共有されているものの、事態を動かす大きな判断にはなかなかつながらない。

その結果、現場の疲弊だけが少しずつ積み重なっていきます。

 

こうした状況を前にすると、私はエスカレーション(役職者や責任者に状況を伝え、判断を仰ぐこと)の意味について考えさせられます。

 

エスカレーションという言葉に、少しネガティブな印象を持つ人もいるかもしれません。

問題を上に伝えることは、自分の能力不足を示すことになるのではないか。あるいは、問題を作った人だと思われるのではないか。

 

そのような理由で、エスカレーションをためらう場面を、私はこれまで何度も見てきました。

 

しかし、本来のエスカレーションはそういうものではありません。

プロジェクトを前に進めるための重要な手段です。

 

現場でできることには限界があります。

追加の人員を投入するのか。

開発領域を絞るのか。

期限を見直すのか。

 

こうした判断は、現場だけでは決められません。

だからこそ、状況を整理し、上の判断を仰ぐ必要があります。

 

エスカレーションは強力な手段ですが、いくつか注意すべき点もあります。

 

第1に、エスカレーションの結果が現場にとって必ずしも快適とは限らないことです。

人員の変更や体制の見直しが行われれば、現場は戸惑うこともあります。しかし、現場におもねるだけでは状況が打開できないこともあります。

 

第2に、問題の根本原因を見誤らないことです。

原因の整理が不十分なまま対策を提示しても、状況は改善しません。だからこそ、ファクトベースで状況を整理することが重要になります。

 

第3に、誰にエスカレーションするかです。

役職として上でも、必ずしも意思決定ができるとは限りません。プロジェクトを動かす判断ができる相手を見極めることも、PMにとって重要な仕事です。

 

そしてもう1つ大切なのは「エスカレーションがメンバーを守ることにつながる」という点です。

 

無理な状況を現場だけで抱え続ければ、チームは疲弊します。

状況を正しく伝え、判断を仰ぐことは、チームを守ることでもあります。

 

エスカレーションは、単に問題を責任者に伝えることではありません。

プロジェクトを前に進め、メンバーを守るための責任ある行動です。

だからこそ、エスカレーションは大切なのです。 ]