グローバルのヒント
木暮知之のインサイト
「敬意ある率直さ」が多様性を力に変える
先日のワールドカップ、日本対ブラジル戦。結果は惜しくも敗れましたが、日本代表の戦いぶりは多くの人の心を動かしました。
試合そのものも素晴らしかったのですが、私がもう一つ印象に残ったのは、本田圭佑さんの解説でした。
本田さんは、現役の日本代表選手を「久保さん」「遠藤さん」と、必ず「さん」付けで呼びます。
一方で、プレーについては一切遠慮しません。
「ここはシュートを選ぶべきだった。」
「この判断は違ったかもしれない。」
率直に、自分の考えを述べます。
私は、この姿勢にとても考えさせられました。
そこには単なる礼儀以上のものがあります。
相手への敬意を持ちながら、意見は率直に伝える。
人格ではなく、行動について議論する。
この姿勢こそ、これからの組織に求められるコミュニケーションではないでしょうか。
近年、多くの企業で「Diversity(多様性)」という言葉を耳にします。
異なる価値観や文化、経験を持つ人が集まることは、組織にとって大きな強みになります。
ただ、私は時々、Diversityが「相手を受け入れること」だけだと理解されているように感じます。
もちろん、相手を尊重することは大切です。
とはいえ、それだけでは新しい価値は生まれません。
また、自分と違う考えを頭ごなしに否定してしまえば、多様性は対立へと変わってしまいます。
本当のDiversityとは、その中間にあるのではないでしょうか。
相手は自分とは違って当然。
だからこそ、自分の価値観だけで判断しない。
そのうえで、違うと思ったことは率直に伝える。
そして、お互いの考えをぶつけ合いながら、一人では思いつかなかった答えを探していく。
私は、この姿勢を「敬意ある率直さ」と呼びたいと思います。
プロジェクトマネジメントの現場でも、まったく同じことが起こります。
営業、IT、現場、経営、海外拠点。
それぞれが異なる立場を持ち、それぞれに正しさがあります。
だからこそ、重要なのは「誰が正しいか」を決めることではありません。
「プロジェクトにとって何が最善か」を、一緒に考えることです。
そのためには、相手の人格を尊重しながらも、意見や行動については率直に議論する勇気が必要です。
本田さんの解説を聞きながら、私は改めて感じました。
敬意と率直さは、決して相反するものではありません。
むしろ、相手への敬意があるからこそ、本音で議論ができるのです。
Diversityは、違いが存在する状態を指します。
一方で、その違いを組織の力へと変えるのは、「敬意ある率直さ」です。
違いを恐れず、違いを押し込めず、違いを対話によって価値へ変えていく。
それこそが、多様性を本当の競争力へと変える第一歩なのではないでしょうか。
